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会長挨拶

2008.6.14就任 新会長 入倉哲郎（ワンダラー）ご挨拶

海洋民族という言葉を聞くたび、胸の中を潮風が通り過ぎるような爽快な気分になります。四方を海に囲まれたわが国では、海に眼を向けずに暮らすことは不可能です。いくつかの時代を除いてわれわれは海洋民族と呼ばれるに足る資格を持っているとおもいます。帆走艇(ヨット)についても、幾多の優れた先人たちが海と船の伝統を築いてきました。そして短い期間ですが、もともとわが国にあった木の文化と融合して欧米に負けないすばらしい木造艇(Wooden Yacht)を世に送りだしました。ところが時代は木造艇に味方せず、前会長が危惧していたように近年海に出て行く木造艇は減少の一途をたどっていました。
　白雲おのずから去来す。このところすこし流れが変わってきているような気がします。ヨーロッパにおけるクラシックボート・レースの隆盛をみると、西から黎明がほのかに見え始めました。彼らは単に郷愁(ノスタルジア)だけを追求しているのではなく、行き詰った大量生産・大量消費資本主義を反省し、海を愛し、海に出て行く海洋民族の伝統と文化を未来につなぐことを目標にしているようです。われわれも、先人たちの作り出した伝統と文化をさらに発展させ、未来につなげるようWooden Yacht Club Japanの旗を掲げ、海に出て行こうではありませんか。

万国の木造艇オーナー、団結せよ

木造艇のオーナーたることは、経済的にも、肉体的にも、セイシン的にも時間的にも、辛く厳しい人生の選択である。時間的とは、メンテナンスにかかる時間であり、重くて鈍速な艇がいつまでたっても目的地につかぬ時間である。だがそれは、心暖まる、忘れ難い、神の御心に沿った人生である。バイブルの言葉に待つまでもなく、亡びに至る門は広く、生命に通ずる道は常に狭い。されば筆者はここに、冒頭に掲げたカール・マルクスの共産党宣言のひそみにならい、高らかに木造艇クラブの結成宣言を謳い上げ、同好有志の参集される光景を空想するものである。

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